『測定台の寸法が増加する原因とは?』40.016mm → 40.00±0.01mmへ復元した修理事例
『SKS3の経年変化による寸法膨張』を研削加工で高精度復元した測定台修理
本記事では、『測定台の寸法が使用中に増加してしまう原因』と、その対策として実施した『高精度復元修理』の事例をご紹介します。
特に、『ゲージの寸法が大きくなった』『測定値が合わない原因が分からない』『修理か新作か判断に迷っている』といった課題をお持ちの方に有益な内容です。
■ 製品仕様(修理対象)
形状:(φ80×T16)+(φ40×T24)トータル厚み40
材質:SKS3(焼入れ・焼戻し・サブゼロ処理)
硬度:HRC58~63
総厚み:40.00 ±0.01mm
数量:1個
設計:お客様
製造番号:25-02772
■ お客様の課題『摩耗していないのに寸法が大きくなった』
通常、測定台やゲージは使用によって摩耗し、寸法は『小さくなる』のが一般的です。
しかし今回のケースでは、
・総厚み:40.016mm(+0.016mm)に増加
という『逆の現象』が発生していました。
この状態では、測定基準として使用できず、製品の測定精度に直接影響するため、早急な修理が必要でした。
■ 原因『SKS3の経年変化(内部組織変態)による膨張』
本現象の原因は『材料内部の組織変化』です。
SKS3などの工具鋼では、熱処理後に残る『残留オーステナイト』が、時間経過や温度変化により
『オーステナイト → マルテンサイト』
へ変態することがあります。
このとき、体積膨張が発生し、結果として
『寸法が大きくなる』
という現象が起こります。
■ サブゼロ処理との関係
この寸法変化を防ぐために実施されるのが『サブゼロ処理』です。
・−80℃以下で急冷
・残留オーステナイトを減少
・長期寸法安定性を確保
ただし、以下のようなリスクも存在します。
・図面に記載があっても実施状況が外観では判断できない
・工程上の見落としが発生する可能性
そのため、『経年後に寸法が増加するトラブル』は実務上一定数発生します。
■ 解決方法『研削加工による寸法復元』
今回の測定台は『寸法が大きくなっている』ため、研削加工による復元が可能でした。
当社では以下の工程で対応しました。
① 恒温測定室で現状寸法を精密測定
② 寸法変化の傾向を分析
③ 研削加工により 40.00 ±0.01mm に復元
④ 再度恒温室で全数測定
⑤ 公差内クリアを確認し出荷
結果として、測定基準として再使用可能な状態に復元しました。
■ 修理後のポイント『再変化リスクと運用』
本製品は製作から長期間経過しているため、
・再度大きく変化する可能性は低い
・ただし定期的な寸法確認は推奨
と判断されます。
精密測定に使用するゲージは、『定期校正』が品質維持の重要なポイントです。
■ 同様トラブルの発生条件と予防策
発生しやすい条件
・SKS3などの工具鋼
・サブゼロ処理が不十分な場合
予防策
・信頼できる熱処理工程の採用
・材料選定の最適化
・定期校正の実施
■ 本事例のポイント
・『寸法が増加する』という異常現象に対応
・材料特性まで踏まえた原因分析
・研削加工でミクロン単位の復元
・測定台を新作せず再生しコスト削減
■ 測定台・ゲージの修理でお困りの方へ
以下のようなケースはご相談ください。
・『測定台の寸法が大きくなっている』
・『測定値が合わない原因が不明』
・『修理と新作どちらが良いか判断したい』
・『他社で修理を断られた』
単品修理・再研磨・精密ゲージの復元にも対応しています。
■ FAQ(よくあるご質問)
Q1. 測定台やゲージの寸法が大きくなることは本当にあるのですか?
A1.あります。SKS3などの工具鋼では、内部の残留オーステナイトがマルテンサイトに変態することで体積膨張が起こり、寸法が増加する場合があります。
Q2. 寸法が大きくなった場合は修理できますか?
A2.可能です。研削加工により指定寸法へ戻すことで、高精度な復元が行えます。
Q3. サブゼロ処理をしていても寸法変化は起きますか?
A3.理論上は抑制されますが、処理条件や工程によっては残留オーステナイトが残り、経年変化が発生する可能性があります。
Q4. 修理後に再び寸法が変化する可能性はありますか?
A4.可能性はありますが、長期間使用された後であれば再変化は小さい傾向にあります。定期的な測定確認を推奨します。
Q5. 修理と新作はどちらが良いのでしょうか?
A5.状態によります。摩耗や変形の程度、コスト、納期を総合的に判断し、最適な方法をご提案します。
渡辺精密工業株式会社(WSL)へお気軽にご相談ください。
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